【リアサス考察】ハイパープロはほんとにメリットのあるスプリングなのか?
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VFR800F(整備・カスタム), バイク, 比較・検証系(雑学系)
バイクのフロントフォーク、リアサスにはスプリングがついており、この形状により走行性能がガラッと変わります。
スプリングの形状
- シングルレート
(レース用に多い) - ツーステップレート
(ネイキッド純正など) - 不等レート
(一部の特殊サス)
今回はこの不等レートのリアスプリングについて更に深掘りしていきます。
※この話はかなり難しいので、サス調整に一定の知識のある上級者しか伝わらないような内容なのでご了承ください。
不等レートスプリング、結局どうなん?
結論から言うと、、、不等レートスプリングは減衰調整込みで考える必要がある。です。
ACTIVEのハイパープロスプリングのコンスタントライジングレートがいわゆる不等レートですが、沈み込むほどにレートが立ち上がって最終的に底付きを防止するという仕組みです。
底付き防止のみの踏ん張りを最優先に求めたスプリングと言っても過言ではないと思われます。
- レートが低い部分の動き
- 静止時の高さ
- プリロードを締めると?
- リバウンドストロークの話
この4項目で説明していきます。
レートが低い部分はほぼ使えない
レートとは、スプリングの強さの事。
例えばVFR800Fはノーマルで17kg/㎜(以後キロ)のスプリングレートの設定(黒線)です。
※これは1㎜縮めるのに17kgの力が必要と言う事です。
つまり15キロから最終末期レートが24キロという強烈な硬さのスプリングに変化します。
※可変レートですので、レートの低い部分から高い部分までシームレスにつながります。(グラフ参照)
しかし、これがどの時点で24キロに到達するのか、どのようなカーブを描いてレートが強くなっていくのかが全く分かりません。
シングルレートっぽいのか、はたまた二次曲線的に跳ね上がっていくのか、S字を描くのか…。
(バイクのリンクの仕組みが組み合わさると更に複雑です。)
物理的にスプリングはレートが低い部分(つまり縮み始めのこと)から動いていくものなので、車重+体重'(1G’)の時点ですでにある程度沈んでおり、街乗り程度の弱い荷重で半分以上縮んでしまってる状態からのスタートです。
なので初期から割とごつごつとした乗り心地です。
さらにコーナーや段差で荷重が増えるとレートの高いスプリングに変化しているので、実質的に沈み(縮み)ストロークが短いサスペンションと言う感じです。
弱い荷重で動くとされている低いレート部分はほぼ使えません。
静止時にかなり沈んだ状態からスタートのメリット
先ほど説明したように弱いレートはすぐ縮んでしまうので、巡行時などのサス変化が少ない時は結構沈んだ位置で落ち着きます。
と言う事はリバウンドストローク*を確保しやすいというメリットがあります。
*リバウンドストローク…縮んだサスが伸びる時の動きの事
主に、滑ったりした際や段差の路面追従性に全特化しています。
なのでスポーツ走行や交差点を曲がった時にも接地感が強く、安心感があります。
逆にデメリットもあります。
- 停止前に前のめり感が強い
- 段差路面では車体が浮く感じ
- 跳ねた感じ
必要以上のリバウンドストロークはかえって曲がりにくい原因にもなります。
リバウンドストロークが大きすぎると車体姿勢が崩れやすいですね。
リバウンドストロークがほぼ無負荷
そのリバウンドストロークですが、ほぼ荷重がかけられません。
どういう事かと言うと、ハイパープロは可変レートなので初期のレートは低いです。レートが低い部分は一気に縮みます。
レート低い部分で一気に沈んだスプリングは、途中でレートの高い部分に当たり、衝撃が来ます。
そこから跳ねながらサスが伸び切り、また静止時の高さに戻るを繰り返します。
つまり、リアサスが動いている状態は路面を追従しているだけであり、力は逃げています。
路面に力を加えるのはそれ以降、レートの高い部分での話です。
リバウンドストロークはただ路面を追従するだけに特化しており、伸びきった後の1G’まではトラクションはほぼかけられません。
と言うことであまりプリロードを抜きすぎるとアクセルを開ける際にリアの動きが落ち着くまでワンテンポ遅れが生じやすくなります。
スラロームが激遅です。
ここえもう一つキーになってくるのが減衰力です。
減衰力がもともと強いショック
減衰とはダンパーとも言われ、サスペンションが動くスピードを抑えているものです。
自動車のリアゲートの左右に細い棒がついている、あれ(リアゲートダンパー)と全く同じです。(ガスかバネかの違い)
リアサスで言うと、内部のオイルが狭い通路を通る際の抵抗を使って、サスペンションの伸縮の動きをゆっくりとさせています。
それを緩める(通路を広げる)とシュッと動き、締めこむとヌターっとなります。
そしてハイパープロリアサスは、もともとの減衰圧設定がかなり強めに作られています。(特に伸び側)
恐らく高応力、高反発、高レートなスプリングに対応するために伸び側の減衰調整を全緩めでも強めで、伸びてくる動きがかなり遅いです。
縮み始めの部分はスプリング自体の反発も弱いため、より、伸び側の減衰力が過剰に効きすぎている感じです。
と言う事は、一回沈んだサスが伸び切る前にまた段差で沈んで、どんどん車高が下がっていきます。
それもあって、若干プリロードを強めにかけて使う方が動き的にはバランスが取れている仕様だと思われます。
上手く不等レートを活かすならプリロード調整と減衰セッティング
ハイパープロリアサスは適当でもそれなりに対応してくれますが、よくするためにはかなり試行錯誤する必要があります。
最後にプリロードと減衰調整について深掘りします。
プリロードを締めると全く縮まないバネ
体重が重い人や、沈み込みすぎを軽減するなら基本的には割と強めのプリロード*をかけておきます。
*プリロード…スプリングをあらかじめ縮めておくこと。
しかし不等レートの場合、ちょっとプリロード量を変えただけでも、上記の図のように大きく変化してしまいます。
プリロードを締めこむと全く沈まず、緩めると静止位置がかなり下がってしまうサスペンションになります。
僕が感じたのはピンクのラインが感覚として最も近いです。
緩めたメリットは「柔すぎない」
普通はプリロードを緩めると車高が下がることで、底付きやリバウンドストロークが増えて、ふわふわした乗り心地になります。
確かに路面の衝撃自体はマイルドになりますが、車体姿勢や動き的には良いとは言えません。
一方で、ハイパープロは緩めすぎても底付き防止でバネレートが上がってくれるので、そこまでふわふわではありません。
しかしリバウンドストロークを忘れてはいけません。
伸び切りから一気に沈み込んでレートの高いところでストロークが止まる。
ドカンと言う衝撃が伝わりやすいです。
さらに反発が弱い状態では伸び側減衰力が過剰に効いてしまいます。
実際の走行では残ストロークが少ない状態で乗ることになり、沈んだ後に、伸び切る前に追加で強い衝撃が来ると沈みっぱなし(底付きやバンプタッチ)もしやすくなります。
これがシングルレートスプリングで荷重に応じてグ~っと沈む事とはちょっと意味合いが違ってきます。
締めたメリットは「硬い中でもストロークする」
プリロードを締めこんでいくと、通常は車高が上がりごつごつと硬くなります。
ハイパープロはちょっと違って、舗装路面ではなぜか突き上げがソフトになり、乗り心地が良くなります。
大きい段差でダン!ではなく、トン。と言った感じ。
しかし弱い荷重ではほとんど動かないため、砂とかツルツル路面で極端に滑りやすくなります。
実際、スポーツ走行練習でカーブ手前でリアタイヤがズズっと滑っていました。
どこに合わすか。
体重で多少の増減はあるにせよ、かなり微妙な調整になります。あまり調整範囲は広くなさそう。
続きます。
圧側の減衰調整を強める
プリロードを緩めた場合、静止位置が低くなり、リバウンドストロークが増えて伸びた後に一気に沈みこむ仕様になってしまいます。
一気に沈みこむということは、「バイン!」と強い反発を食らいやすいという事です。
そこで解決策として圧側の減衰力を強める方向にするのです。(フォークの場合はオイル粘度を1番手上げる。)
そうすることによって、スプリングレートの低い部分をうまく使うことができます。
一気に沈んでしまう部分でストローク時間を確保(時間をかける)することができ、効果的に荷重をかけていける足回りになります。
リアサスペンションの高速3weyタイプの出番。
ハイパープロリアサスは、低速側と高速側のふたつにわかれており、通常の動いの『低速側』と、段差などの速い動きの時にサッとストロークさせられるような『高速側』と二つあります。
面白いですが、頭を悩ませてくれます。
不等レートのデメリット
デメリットを考えると以下の通りになります。
一気に沈んだ時にレートの高いところで壁を感じる
…ストロークすると常時突っ張った感じになる。
割とごつごつした乗り味
…高応力なスプリングなのか、微振動が多い。
沈んだ後の跳ねが強い
…深く沈むシーンではそれに応じた反発力が返ってくる。
ストローク量が短いのでスポーツ走行には不向き
…スポーツ走行や段差の多い場所などを走行するには不向き。
メリット
沈みすぎ、突っ張りすぎにはならない。
…そう言われたらそうかも。
まとめ
高級サスペンション(N社、O社)に飽きた人はどうぞ。
動きは面白いです。
そしてセットが決まるとかなり気持ちいいです。
セッティングやバイクの動きにあまり詳しくない人向けなような気がします。
今までの知識が豊富な人や、ある程度乗れる人からするとなんだこれってなります。
※ACTIVE開発陣に相談しても、あまりパッとした回答は得られませんでした。
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